復活の兆しを見せた朝乃山 「力まず全身を使う」相撲の進化

東前頭10枚目と幕内中堅まで番付を戻してきました。3月場所後は久しぶりの巡業に参加して他の部屋の力士とも稽古を重ね、以前の感覚を取り戻しつつ迎えた5月夏場所だったことでしょう。場所前の稽古を見ていて、今場所こそは目標の二桁10勝を達成し、うまく波に乗れば優勝争いに絡んでくることもあるかと秘かに思っていました。場所直前の5月7日㈭伊勢ケ浜部屋の関取衆と今話題の三段目旭富士が出稽古にやってきました。幕内申し合いでは、熱海富士や義ノ富士、伯乃富士、寿ノ富士、旭富士等と胸を合わせ、勝ったり負けたりと互角の稽古を繰り広げ、時には右差し一気に前に出る相撲も見せていました。

一気に前に出る相撲は、誰もが理想とする相撲ですが、「言うは易く、行うは難し」です。何故か。相手がいることがもちろんですが、自分の身体が力まず全身が同時に使えて初めて取れる相撲だからです。

伊勢ケ浜部屋との合同稽古

今場所は、そういう相撲が何番かありました。3日目宇良戦、9日目千代翔馬戦、10日目藤青雲戦等です。特に藤青雲は最近力をつけてきて先場所敗れている相手だけに注目していましたが、立ち合い踏み込んで足を止めずに右差しからハズへと流れるような動きで相手を土俵下へと押し出しました。頭で考えることなく体が自然に反応した朝乃山らしい相撲だったと、見ていてスッキリしました。こういう相撲が増えてくると、三役復帰はもちろん大関復帰や更にその上へという希望が広がっていきます。

その為には、“力まず全身を同時に使う”ことが一番大切になってきます。そういう体の使い方を骨身に沁み込ませるために「四股」や「テッポウ」「すり足」があります。何事も便利になり過ぎた現代の日常生活では全身を同時に使う機会はまずありません。腕だけ、脚だけ、指先だけと、偏った使い方が多くなります。その延長でも相撲は取れますが、レベルが上がれば上がるほど一部だけを使った動きは関節への負担が大きくなり、相手に伝わる力は頭打ちになってきます。

“力まない”というと“肩の力を抜く”ことが連想されると思いますが、腰も力みますし、脚も力み、すると足が出なくなってしまいます。そういう日常的な偏った体の使い方を、非日常的な(動物的な、ナンバ的な)使い方にするために、四股、テッポウを千回単位でくり返し、土俵を蹴らずに重力で体を倒していくようなすり足をくり返す必要があります。

力まず全身を同時に使うことで“腰で相撲を取る”ことが可能になってきます。そういう可能性を秘めた朝乃山の相撲、今場所は不可抗力的な足のケガで残念な結果に終わりましたが、勝った相撲では、“全身を同時に使う相撲”が何番か見られるようになってきました。若隆景の史上3位となる25場所ぶりの優勝(1位は琴錦の43場所)が話題となりましたが、それを上回る朝乃山の歴史的復活優勝を期待して見守っていきましょう!

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