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朝乃山、復活への確かな一歩
膝の大怪我から三段目まで番付を落としながらも史上初となる2度目の関取復帰を果たした朝乃山、西十両13枚目で久しぶりの大銀杏に新調した締め込み姿で15日間両国国技館の土俵に上がりました。
初日旭海雄に攻め込まれるも右からのすくい投げで下し、2日目は西ノ龍を左四つになって攻め込むものの土俵際で上手投げをくらい黒星を喫し、3日目も風賢央に立ち合いから一方的に攻め込まれ土俵際の叩き込みで勝ちを拾いと朝乃山本来の右四つ前に攻める相撲からは程遠い内容でのスタートとなってしまいました。それでも4日目宮乃風戦からは前に出る相撲を取り戻し朝乃山らしさを発揮して千秋楽まで優勝争いに絡む12勝3敗の成績を上げたのは大いに評価されて良いことだと思います。
大相撲は15日間という長丁場で行われますので、他の競技に比べ体調管理や集中力の維持という面での難しさがあります。細事にこだわらない大胆さが必要ですが、ほんの些細なことが心身の不調につながることもありますので、細心さも併せ持たなければなりません。また15日間の中では気分が乗らない日や魔が差す日もありますので、反省しつつも負けを引きずらない気持ちの切り替えも大切になってきます。その点、歯車がうまくかみ合わないスタートだったのにもかかわらず3日目の危ない相撲を勝ちに結びつけられたのは、日々の相撲に向き合う真摯な姿勢が運を呼び込んだともいえるのでしょう。
4日目の朝の稽古場で、立ち合いに足が出ていないとの反省から、元付人の朝心誠と四股の踏み方や立ち合いの一歩目の出足の稽古をくり返し行う姿がありました。腰割りの構えを崩さずに足を上げ、その構えのまま下す、シンプルな形の四股をくり返し汗をかきつづけていました。

四股は、単なる準備運動や足腰を強くするためのトレーニングではなく(結果的にそういう効果も出てきますが)、心身を統一して使うための鍛錬法です。肩の力を抜いて股関節を開き上半身を真っ直ぐに立てた「腰割りの構え」から左右の足を上下させることで、全身のインナーマッスルがつながり骨をつなげ、筋力に頼らない骨格の構造をつくっていきます。心身の深層にアプローチするため、腰割りの構えを崩さず足を上げ下げするシンプルな動作を何百回、何千回とくり返す必要があります。そうすることで初めて、生の筋力でない心身が統一された職人技ともいえる「相撲力」が生まれてきます。今場所の4日目の朝から踏み始めた四股を、もっともっと無駄な動作を省きシンプルに極めていけば筋力や年齢に関係ない本物の「相撲力」が育っていきます。時間のかかることですが、それが大関復帰、横綱昇進への近道です。「相撲力」を体現できる可能性を秘めた朝乃山の成長を見守っていきましょう!
元一の矢

