強い朝乃山が戻ってきました。得意の右四つ前に出る相撲で相手を圧倒し初日から7連勝、これまで2連敗と分の悪かった北青鵬戦もうまく体を寄せた積極果敢な攻めで寄り切り成長の後を窺わせました。場所前の1月4日に元横綱稀勢の里の二所ノ関部屋に出稽古に行きました。稀勢の里流の羽目板(稽古場の壁)に向かって腰割りを行うことで、腰を前で使うことを覚え、苦手だった北青鵬戦に活かせました。元々腰がいい力士だけに腑に落ちる所があったのでしょう。聞く耳を持ち、自分に合ういい方法だと納得したらそれを実践できるのが朝乃山の最大の長所です。
しかしながら、中日8日目の怪我での無念の途中休場となりました。投げられて負けるときは、いつも相手の右からの投げです。右足が前に送れずにひっくり返ってしまいます。ここからは私の推察ですが、最近朝乃山の足運びが逆足になっているのが気にかかります。相撲の動きの基本はナンバですから、右手が前に出るときは右足が前に出る通常の歩き方とは反対の動かし方を行います。それゆえ、右四つの力士は右を差すと右足が前に出すのが正しい足運びになります。朝乃山に限らず最近の力士一般にいえることですが、立合い上手を取る方の足を大きく踏み込みます。右四つの力士は左上手が早く欲しいから右を差しにいきながら左足を大きく前に踏み込むのです。すると、足は逆足になって右足が後ろに残り、右半身が空白になってしまいます。上手を取った後、すぐ右足が前に出れば逆足にならないのですが、その後も右足が遅れてしまう傾向が多々見受けられます。足運びは、基本であり無意識での動きだけに修正するのは困難を伴いますが、修正できれば朝乃山の強さがよりバージョンアップすることでしょう。