朝乃山、真の相撲力へ

二度の転落が変えた四股と心構え

一年納めの九州場所は11月9日(日)から福岡国際センターにて初日の幕を開けますが、新番付は10月27日(月)に発表されました。先場所西十両13枚目で12勝3敗の星を上げた朝乃山、9枚番付を上げて西4枚目となり、いよいよ待望の幕内復帰が見える所まで戻ってきました。

前回令和5年の三段目からの復活時は、14勝1敗の優勝につづいて13勝2敗で十両を通過して幕内復帰を果たしました。今回も先場所の12勝に引き続き13勝くらい勝って欲しいと期待が高まることでしょうが、焦ることはありません。若手の台頭という周りの状況の違いや、何より膝の状態や年齢的なことも前回とは異なります。
近大を卒業して入門し、1年で十両に上がり、3年少しで幕内最高優勝を飾りトランプ大統領からトロフィーを授かり、4年で大関昇進と、順調すぎるほど順調に番付を上げてきた朝乃山、まさに時流に乗って出世の階段を駆け上っていきました。優勝を決めた夜、上り座敷に入りきれないほど報道陣が集まり先代の師匠と共に記者会見を行ったときに、先代が「おい、優勝ってこんなに簡単にできるもんなんだなぁ」としみじみ語っていたのが印象的でした。鳴り物入りで入門した大関朝潮の先代は、大関獲りに何度も失敗し、優勝決定戦に何度も敗れ、入門7年目の昭和60年3月場所でようやく優勝賜杯を手にすることが出来ました。それだけに大関昇進、幕内優勝の難しさを骨身にしみて感じていたことでしょう。何度も弾き返されただけに賜杯の重さには格別なものがあったと思われます。

朝翠龍との稽古


朝白龍(左)との稽古


いま振り返ってみると、朝乃山の優勝や大関昇進は本人の実力と努力によるのはもちろんですが、“時流の勢い”に乗ったという側面が大きかったように思われます。出世するときには“勢い”が大切なのは言うまでもありません。ただ“勢い”は永遠に続くわけはなく、必ず止まります。そこに不祥事と大怪我という不運が重なり二度にわたる三段目までの陥落という憂き目に遭いました。二度の陥落で相撲の難しさを骨身に感じ、相撲に向き合う姿勢も格段と増してきています。相撲に向き合う姿勢が如実に表れるのが四股です。先月号で紹介した通り、四股の踏み方が明らかに変わってきました。これまでも他の力士に比べると休むことなく踏んではいたのですが、ときに数をこなす義務感のようなときもありました。それがようやく相撲の本質を目指すための四股に変わってきて、単なる“勢い”ではない、職人技としての相撲力を身につけつつあります。勢いで上がると必ず反動がありますが、相撲力という地力は体調や年齢にさほど影響を受けず積み重ねていけます。目の前の勝ち負けに一喜一憂することなく真の相撲力を身につけるための本場所の一番一番です。今場所は10勝5敗くらいでいいと思っています。腰を据えて見守っていきましょう!

元一の矢

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