朝乃山 いよいよ関取復帰へ 西幕下筆頭 大相撲名古屋場所

 6月30日(月)に名古屋場所の番付が発表され、先場所西幕下14枚目で6勝1敗だった朝乃山は西幕下筆頭に上がり、いよいよ関取復帰が目前になってきました。5月場所を終え6月2日から部屋での稽古が再開され、13日(金)~15日(日)は茨城県下妻市の大宝八幡宮、18日(水)~22日(日)は静岡での合宿と、環境を変え緑の木々に囲まれた土俵での稽古をこなして名古屋に乗り込んでいます。

 左膝の前十字靭帯断裂という大怪我から一年、手術とリハビリを乗り越え3月場所での復帰から4か月余り、まだまだ完全復活とはいえませんが、一進一退をくり返しながらも前に向かって進んでいることは間違いありません。

 5月場所までは、膝の横ブレを防ぐための金具が付いた装具を付けての土俵でしたが、5月場所後から装具を外し、強度の強いサポーターに替えて稽古を行っています。ただ、新しいサポーターに慣れるのには時間がかかりそうで、幕下申し合いや朝紅龍との稽古でも力を出し切れずに敗れてしまうこともあり、思うようにいかず苦しむ状況もあるようです。それでも、毎朝一番に土俵に下り、その日やるべき事を一日も休まず続けています。その姿勢には、朝乃山の相撲に対する“敬意”を深く感じます。
 思想家で武道家でもある内田樹氏は「教育論」の中で、教師が子供たちに向き合う姿勢で大切なことは、“愛”ではなく“敬意”だと語ります。どれほど人を愛しても、こちらの気持ちが相手に伝わらないということはよくあります。こんなに愛しているのに振り向いてくれないからと愛が殺意に変わることさえあり、愛は取り扱い注意の感情で、教育の場には持ち込まない方がいいと言います。それに対し、敬意は子供たちにも必ず伝わるとし、敬意とは距離感のことで、簡単に近づいてこない、すぐに心の中に踏み込んでこない、すぐに理解した気にならないという、ふるまいのことだといいます。

 相撲に向き合う姿勢にも同じことが言えるのではないでしょうか。相撲に対する愛はもちろん大切な事ですが、愛は見返りを求めてしまいます。「これだけ一生懸命やっているのに勝てない、ケガばかり続く・・・」
しかし敬意を持って取り組めば、思うようにいかない状況でも何度ケガに見舞われようと相撲に対する“敬意”を失うことはありません。

 今場所こそ全勝優勝で関取復帰と願いたいところですが、1敗や2敗しても気にすることはありません。まだまだ大関復帰、横綱昇進への通過点です。「富山と東京」の読者の皆様は、朝乃山愛に溢れた方が多いと思いますが、真摯に相撲に向き合っている朝乃山を“敬意”をもって見守りつづけていきましょう。

元一の矢

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